シネマにドラマ 映画 この世界の片隅に

戦時中の広島県呉市を舞台にしたアニメ。
2016年11月から63館での上映で始まったが、徐々に増やしていき400館以上での上映になっていった。
2019年8月で1000日間の上映を記録している。

広島市から20キロ離れた町、呉に18歳で嫁ぐ すず を主人公に、あらゆる物が欠乏していく中で工夫を凝らす生活が描かれる。
だが戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、何度も空襲に襲われる。
市街が灰じんに帰してゆく中、すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。
そして昭和20年の夏がやってきて・・・
っというストーリーなのですが、火垂るの墓のような終始苦しめられる主人公たちという事は無し。
温かみのある絵や色使いを見て、白黒写真でしか見たことが無かった広島の焼け野原の以前にも以後にも、景色には色が付いていて、現実の事だったのだと気付かされます。
主人公すずの声をのんが演じているのですが、おっとりしたすずさんの声にぴったり。
毎日眺めていたものがいつしか変わり果て、身近なものが失われてもなお前を向いて生きていくすずの姿には心が震えます。
前半、すずさんの天然ぶりが描かれるだけに、後半の厳しい現実が胸に突き刺さります。
予備知識無しに観ると、衝撃的かと思いますが、その方がいつどうなるか分からない戦争という物や、人生という物について考えさせられると思うので、予習なしで見ることをオススメします。

原作があり、第13回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した、こうの史代の同名漫画をアニメーション映画化したものです。
第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、
第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞、
第41回アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門審査員賞、
第21回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞などを受賞した。
監督の片渕は、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞、
第59回ブルーリボン賞監督賞、
第67回芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞。
またチームとして第65回菊池寛賞を受賞した。

広島という教科書で習う遠い地ということではなく、
70年以上も前の出来事ということではなく、
戦争を知らない世代だからという言い訳もできないほど、肌感覚で迫ってくるさりげない描写と素朴な生活。
あの時と時間は繋がっていて、昔の人が体験した辛い戦争というより、まるで自分の家族を見ているような親近感があるからこその辛さと、ゆっくりと続くその後の人生。
何でもない人間が生きるという意味を教えてくれる、傑作だと思いました。

★5つ満点で
★★★★★
火垂るの墓と並ぶ崇高なまでの日常と時代描写、絶対に観るべき。